インタビュー|ダンスマルシェ DANCEMARCHE TOP
PHOTOGRAPHER × DANCER

カメラマン 長谷 良樹 × ダンサー 池上 直子

ダンサー池上直子と、彼女が率いるダンスマルシェの舞台フライヤーを2公演続けて撮影したカメラマン長谷良樹による対談は、現場の「空間」から生まれる作品の制作裏話から、プロのアーティストとしての仕事観まで。お互いを認めつつも、決して依存することない2人の熱い語りになりました。


◆長谷さんの作品の被写体は素人が多いですね。


長谷:僕はアピールしてくる人やプロのモデルさんのように準備を整えて迫ってくる人が苦手で、影のある人や不完全なものに惹かれます。
「場をつくる」のが好きなんです。場を見つけて、自分で「空間をつくる」。素人をモデルに使うのも、ナンパみたいに街で声をかけるけれど、その場でパッと撮影するんじゃなくて、その人に合う場所や素材を探して、空間を準備してから撮影します。

それは、池上直子を撮るときも同じ。
池上直子ってすごいダンサーがいるんだけれど、彼女自身が知っている池上直子を撮ってもおもしろくない。それじゃ物足りなくて、自分の世界に引き込みたくなる。池上直子の「影」を引き出せるかどうか。


◆池上直子にも「影」が?


長谷:『花ゲリラ』の撮影前、初めてミーティングをしたときに、「花が、ゲリラが、詩が…」って内容はさておき、彼女といろいろ話していくうちに、これならお手伝いできるな、と感じました。

池上直子という人は、女性としてのフラジャイルな部分も持ちつつ、男っぽいところを一度通過してきたようなアプローチをしてくる。
日本の女性って「ラブリー」を履き違えているのか、甘くてふわふわした「ロリータ」ばかりで、僕は全く興味がないんだけれど(笑)、池上直子には、かっこよさや毒っぽさを感じました。


池上:そう、どこかに毒っぽいのがあるのが好き。作品対して「もっと分かりやすいのを作ってください」とか言われることもあるけれど、そんなのつまらない!って、私は思っちゃうタイプ。きれい過ぎたり、毒だけだったり、分かりやすいのは嫌なの!


長谷:あはは、こう言い切れる人も珍しい(笑)。
池上直子には、ちゃんと育ちの良さも品も感じられるのに、人間的な毒を持ち合わせていて、その葛藤やブレの大きさの中で戦っている。そういう人生を過ごしているアーティストだから、好きなんです。


◆長谷さんが創り出す「空間」とは?


池上:とにかく『花ゲリラ』のフライヤー撮影したときの「空間」が、すごかったの。こんなにリノベーションをしているのに、もともと印刷工場の中の浴室で、当時のタイルとかも残っているせいか、湿気があるような気がして。


長谷:本当は湿気なんてないのに、不幸な感じがあったね(笑)。


池上:あの時の撮影は4時間くらい。お互い探り合いながら、いろんなことを試行錯誤していくうちに、だんだん熱くなってきてね。私は物理的にも、精神的にも、どんどん脱がされちゃう感じになって。


長谷:ずっと踊りっぱなしだったしね。「なんで脱がないの?」「脱ぐの?!」ってヒートアップして(笑)。あれは、僕が裸を見たいとか脱がせたいわけじゃなくて、状況がそうさせていく感じで。


池上:後から振り返ると、最初の1時間で撮影は終わっていて、あとは遊んでいただけかもしれない。でも、あの濃い時間があったからこそ、長谷さんとの関係性が生まれた気がする。


◆『moondial』の撮影は?


長谷: 九十九里に行ったのに、僕は海とか全然興味なくて(笑)。海に行けば、みんな意識は海に向かうのかもしれないけれど、僕は海に背を向けて、砂丘のアリジゴクのようなところへ池上直子に降りるよう頼んで、それを上から撮りました。


池上:(なんで、ここを切り取ったの?!)って、逆に、私はびっくりした。「何の変哲もない、ふつうの海岸」だったのに。


長谷:僕は、「空間」が見えているか、いないか。そこを切り取れるか、切り取れないかの違いだと思います。同じ時間、同じ場所にいたとして、ほかの人でも「何か」切り取ることはできるけれど、それは違うものになってしまうだろうから。


花ゲリラ

◆フライヤーが作品に影響することは?


池上:作品について私から伝えたのは、『花ゲリラ』のときはタイトルと茨木のり子の詩を使うこと、『mooondial』においては「月と砂と…」くらいで、細かいことは言わなかった。長谷さんとは、限られた情報の中で、生まれるものだから。
ただ『moondial』の撮影では、実際に砂浜で踊ったことが、作品の踊りに反映されているし、影響は大きいと思う。


長谷:フライヤー制作という現実的なスケジュールで、最初のタイミングになるし、それがビジュアル化されるからね。


池上:でも、作品とまったく違うものになってもいいかな…とも思っていたり。


長谷:その“適当さ”好きだな(笑)。
よくコンセプトから入る人がいるけれど…


池上:『moondial』だったら、まず月あるべしみたいな?


長谷:そうそう。現場を見る前から「こうしなければいけない」と、がんじがらめに考えてしまう思考回路の人とは、仕事がやりにくくなる。これだって商業的なプロモーターが間に入ってしまったら、きっとできなかったね。
これは〈池上直子の作品〉だから。


◆池上直子の作品=「ダンスマルシェ」とは?


長谷:写真に関していえば、「寄り添う」より「引き出したい」から、リハーサルとかゲネプロとか、そういうのは正直あんまり撮りたくない。僕は、関係性のはじまりが最大限の力を発揮するときだと思っているから。


池上:写真は、私と長谷さんとの関係性であって、作品とは別個。作品は、ダンサーとつくるものだから。

照明、ピアニスト、ダンサー、カメラマン…私の中では、アーティストとは全員対等。放射状にのびた繋がりの先にアーティストがいる。


長谷:いろんな人に対して、それぞれ対等な関係で対峙できるのが男っぽいよね。「ダンスマルシェ」はきっと、いろんな池上直子を売っているマルシェ(=市場)。


池上:私は、自分が強いとは思わない。いろんな人とかかわることによって「私」が変わっていくもの。
長谷さんとやれば、長谷さんと変わる。阿部さん(『moondial』ピアニスト)とやれば、阿部さんと変わる。空気感が全然違うものになってくる。
でも、私はひとりしかいない。


moondial ~月と会話~

◆ふたりの関係性は?


池上:最初の撮影が終わって、私も気が付いたの。長谷さんとは、ここだけの関係性でいたいなって。
最初にボールを投げるのが長谷さんで、一対一で向き合っているところから、ふたりで広げていく感じ。


長谷:そういう時代なんだと思う。僕からも放射状にのびている関係性がある。


池上:長谷さんとの仕事は、フライヤーのための撮影ではあるけれど、私は、別のところで挑戦している気がする。


長谷:まぁ、僕は撮ってしまったら、もうおしまい。
池上直子が別のアーティストたちと作品をつくっているあいだ、あれはどうなったんだろう、どうやるんだろうって、本番を楽しみに待つだけ(笑)。
この距離感がいいんです。



(インタビュー記事・宮崎志乃)

 

長谷 良樹【YOSHIKI HASE】


学習院大学卒。
10代からバックパックを背負い旅をし、世界への目をひらく。
大学卒業後、大手商社に勤務。
勤務地近くの神保町古書街で多くの写真集にふれる。
1999年、3年間勤務した会社を円満退社。
単身 ニューヨークへ渡りカメラマンに転身。 
2006年、7年間滞在したニューヨークから帰国する。 
現在、東京に在住。フリーランス活動。


人物、インテリア、フードを中心に広告・カタログ・雑誌・
ウェブなど コマーシャル撮影のほか、自主作品の制作にも積極的。
音楽家などと交流を盛んにする。


多様な価値観に「NO」を言わないことが信条。


WEBサイト YOSHIKI HASE PHOTOGRAPHY >>

 



INTERVIEW

カメラマン 長谷良樹
       ×
  ダンサー 池上直子

PHOTOGRAPHER  ×  DANCER

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